梅津慶一 diary

たことねこ

猫は引き取れません①

私は粗大ごみの回収業をやっている。同業者のなかには、こんな仕事、本当はやりたくないというものもいるが、私はこの仕事が好きでやっている。

どうして好きなのか。それは、見知らぬ他人の家に入っていけるからだ。お城のような豪邸もあれば、3畳一間のアパートもある。

そしてどこでも、人が暮らしていたり、暮らしていた痕跡が残っている。

他人の生活ほど面白いものはないと思うのだが、賛同してくれる人物は少ない。一人暮らしの若者、30歳前後の若い夫婦、一軒家を手放してどこかへ引っ越す中年夫婦と子供たち、住人がなくなって、売却を待つ古い家。

どの家にもアイデンティティがある。

 

私の勤める会社は千葉県北西部にある。比較的住宅が多いが、田んぼや、工場もわりあい多い。

出勤すると、その日自分が担当する場所を確認して、軽トラに乗り込む。カーナビをセットして出発だ。わが社が担当している地域は遠くても車で1時間ぐらい。担当地域に着いたら、カセットテープのスイッチを入れて、徐行運転。

「こちらは粗大ごみの回収車です。・・・・・・」

騒音をまき散らして申し訳ないがこの騒音がないことにはお客さんに気づいてもらえない。

今日の担当地域は、割と面白そうな住宅が並んでいる。

はい、さっそくお客さん発見。

テープを切って車から降りる。

「どうしました?」

「えーとねえ、いろいろあるのよ。机とかCDラジカセとか、ちょっと見てくれる。」

玄関周りは比較的きれいだ。

靴を脱いで上がるとすぐに階段。あまり大きな家ではない。

急な階段を上って二つある部屋の片方が今日のターゲットらしい。