第4の猫⑤(本日3回目の更新です)
駅から10分ほど電車に乗ると、終点の大きな駅に着く。
そこから歩いてすぐの雑居ビルに、目的のクリニックはあった。
2時に予約してあるらしい。
エレベーターを降りると、きれいな歯医者さんのようなクリニックがあった。
「予約している渡辺塔子です」
彼女は言って、診察券を出す。
そうか、塔子さんというのか。
彼女の名前を知らなかった。
そういえば、私の名前を彼女は知っているのか。
気になったので聞いてみた。
「梅津のおじさんでしょ」
「名前は?」
「知らないよ」
「・・・慶一です」
「梅津慶一のおじさん」
そういって、彼女はけたけたと笑った。
こういうところはまだまだ高校生だな。
あまりしゃべることもなく待っていると、15分ぐらいで、
「渡辺塔子さん、中へどうぞ」
とよばれた。
診察室に入る。
50歳ぐらいの女医さんだ。
「あ、私は付添いの梅津というものです」
「高校の方ですか?」
「あ、いえ。彼女の友達です」
「そうですか」
友達には見えないだろうなあ。
でも、他に言い方もないしねえ。
「調子はどうですか?」
「まあまあです」
と診察が始まる。
当たり障りのない会話に聞こえるが、精神科医には重要な意味があるのだろう。
最後に、私に向けて
「梅津さん、塔子さんと仲良くしてあげてくださいね」
と言って、診察は終わった。
薬をもらって外に出ると、すごい解放感。
「ふー、疲れたね」と言って、彼女を見るとなんだか元気がない。
「わたし、病気なのかな」
「うーん、大丈夫そうだよね」
「そうだよね・・・・・・よし、遊びに行こう」
洋服を買って、クレープを食べて、ゲームセンターに行って、長い一日が終わった。