梅津慶一 diary

たことねこ

第4の猫 最終話(本日2回目の更新です)

春の日差しの中、僕とキューイちゃんは道路の端で集会をしていた。

そこへむかって突っ込んでくる自動車が1台。

「こらこら、じゃまだよ。人んちの前で座り込まないの」

あ、塔子さんじゃないか。

正月にもお盆にもゴールデンウイークにも帰省しなかった塔子さんが帰ってきた。

「どうしたの。塔子ちゃん。また、ぶっとばしちゃったの?」

「転勤です。ここからでも通えるところなんだよ」

彼女は車でも電車でも通える地名を口にした。

「ひさしぶりじゃな」

そういって、彼女はにんまり笑った。

僕たちもついつい笑ってしまう。

「おかえり。塔子さん」

「うむ。常陸の国での修行を終えたぞ。今宵は宴じゃ」

笑顔があふれて止まらないけど、いいかげん笑いの収まった塔子ちゃんが

「家財道具を運び込もう」

と言って、車のドアを開けた。

布団と料理道具だけ。

洋服とかテレビとかテーブルとかはバイトの奴らにあげてきたんだそうだ。

「車をどこに置こうか」

あ、ウチの駐車スペースが空いている。

父ちゃんと母ちゃんに相談したら、じゃあ、ちゃんとした駐車場を借りるまでという条件でオッケーが出た。

自動車問題解決。

 

姫様が帰ってきたよ。

制服姿の塔子さん、竹刀を持った塔子さんが、僕の脳内に再現される。

塔子さん、立派になったね。

泣きそうになっているところに、キューイちゃんがやってきた。

抱き上げる。

やったね、キューイちゃん。

塔子さんがあばずれ女にならなかった功績はぼくらのものだよ。

あ、塔子さんがこっちに来るぞ。

もう、いっそ泣き顔でもいいや。

そう思って塔子さんを見たら、彼女がもう泣いているじゃあないか。

「おじさん、ありがとう。わたし、がんばったよ」

「うん。がんばった。とってもがんばったね」

二人で泣いてしまった。

 

立ち直りは、やっぱり塔子さんのほうが早い。

「わたし、明日からもう勤務なんだよ。

おじさんは?」

「ん、勤務予定が決まらなくてさ。

自宅待機」

また二人で笑いあう。

 

キューイちゃん、君も何とか言ってくれよ。

「僕も自宅待機です」

え、空耳?

 

 

 

第4の猫  おわり